THine Value APPRO.PHO社とのコラボで生まれたカメラキット、画質の高さや伝送可能距離が特徴
2024.06.27
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台湾の新北市に拠点を置くAppro Photoelectronics(APPRO.PHO)社。カメラ関連システムの画質調整に高い独自技術を持つデザインハウスである。現在、ザインエレクトロニクスは、APPRO.PHO社に対して高速シリアル・インターフェース技術「V-by-One HS」を適用したさまざまなトランスミッタIC/レシーバICを提供中だ。APPRO.PHO社は、これらのICを活用したカメラキットの開発に取り組んでおり、すでに複数の機種については製品化を始めている。
いずれのカメラキットも、米NVIDIA社が提供するシングル・ボード・コンピュータである「Jetson AGX Orin」や「Jetson Orin NX / Orin Nano」、「Jetson AGX Xavier」、「Jetson Xavier NX」、「Jetson Xavier TX2 NX」、「Jetson Nano」に接続して使う。これらのシングル・ボード・コンピュータは、演算処理性能やAI推論処理性能の高さが特徴である。従って、APPRO.PHO社が狙う用途は、ミドルエンドからハイエンドのアプリケーションになる。具体的には車載機器や、産業機器、医療用内視鏡、監視カメラなどだ。「APPRO.PHO社が製品化するカメラキットのユーザは、台湾のほか、欧州や米国などの電子機器メーカーが中心になる」という。(弊社・台湾拠点営業担当)
いずれのカメラキットも、米NVIDIA社が提供するシングル・ボード・コンピュータである「Jetson AGX Orin」や「Jetson Orin NX / Orin Nano」、「Jetson AGX Xavier」、「Jetson Xavier NX」、「Jetson Xavier TX2 NX」、「Jetson Nano」に接続して使う。これらのシングル・ボード・コンピュータは、演算処理性能やAI推論処理性能の高さが特徴である。従って、APPRO.PHO社が狙う用途は、ミドルエンドからハイエンドのアプリケーションになる。具体的には車載機器や、産業機器、医療用内視鏡、監視カメラなどだ。「APPRO.PHO社が製品化するカメラキットのユーザは、台湾のほか、欧州や米国などの電子機器メーカーが中心になる」という。(弊社・台湾拠点営業担当)
画質調整技術に自信
一般に、カメラ機能を電子機器に組み込む設計作業の難易度は高い。カメラキットはこの難易度を大幅に下げて、比較的容易にカメラ機能を電子機器に組み込めるようにサポートするものだ(図1)。
通常、電子機器にカメラ機能を組み込む場合、まずは映像伝送に必要なハードウェアを取り揃える必要がある。CMOSイメージセンサーを載せたカメラ・モジュールや、映像信号を取り込んで処理するイメージ・シグナル・プロセッサ(ISP)はもちろんのこと、映像信号の長距離伝送に必要な高速シリアル伝送用トランスミッタIC/レシーバICを選定しなければならない。一般的なカメラ・インターフェースのMIPI-CSI2では、最長30cm程度しか伝送できないからだ。
さらに、ソフトウェアの設定/開発も欠かせない。例えば、ISPにおいてオートフォーカスや露出、ホワイト・バランス、ノイズ・リダクションなどのパラメータを設定したり、高速シリアル伝送用トランスミッタIC/レシーバICのレジスタ・データを記述したりする必要がある。
しかし、これで終わりではない。用意したハードウェアを接続し、ソフトウェアを適切に記述/設定しても、必ずしも希望した通りの画(映像)が出力されるわけではないからだ。目標とする画質に達しないケースなどがある。その場合は、トラブルシューティングに取り組まなければならない。通常、トラブルシューティングには、比較的長い時間が掛かってしまう。
「APPRO.PHO社は高い画質調整技術があり、カメラキットで得られる画質については自信を持っている」という(図2)。自信の源泉は、外付けのイメージ・シグナル・プロセッサを利用している点にある。NVIDIA社は画質調整のソース・コードを公開していないため、同社のシングル・ボード・コンピュータで処理するだけでは基本的な画質しか得られない。そこでAPPRO.PHO社が独自開発した画質調整アルゴリズムを外付けのイメージ・シグナル・プロセッサに載せ、高い画質を実現しているわけだ。
図1 カメラキットの構成
通常、電子機器にカメラ機能を組み込む場合、まずは映像伝送に必要なハードウェアを取り揃える必要がある。CMOSイメージセンサーを載せたカメラ・モジュールや、映像信号を取り込んで処理するイメージ・シグナル・プロセッサ(ISP)はもちろんのこと、映像信号の長距離伝送に必要な高速シリアル伝送用トランスミッタIC/レシーバICを選定しなければならない。一般的なカメラ・インターフェースのMIPI-CSI2では、最長30cm程度しか伝送できないからだ。
さらに、ソフトウェアの設定/開発も欠かせない。例えば、ISPにおいてオートフォーカスや露出、ホワイト・バランス、ノイズ・リダクションなどのパラメータを設定したり、高速シリアル伝送用トランスミッタIC/レシーバICのレジスタ・データを記述したりする必要がある。
しかし、これで終わりではない。用意したハードウェアを接続し、ソフトウェアを適切に記述/設定しても、必ずしも希望した通りの画(映像)が出力されるわけではないからだ。目標とする画質に達しないケースなどがある。その場合は、トラブルシューティングに取り組まなければならない。通常、トラブルシューティングには、比較的長い時間が掛かってしまう。
「APPRO.PHO社は高い画質調整技術があり、カメラキットで得られる画質については自信を持っている」という(図2)。自信の源泉は、外付けのイメージ・シグナル・プロセッサを利用している点にある。NVIDIA社は画質調整のソース・コードを公開していないため、同社のシングル・ボード・コンピュータで処理するだけでは基本的な画質しか得られない。そこでAPPRO.PHO社が独自開発した画質調整アルゴリズムを外付けのイメージ・シグナル・プロセッサに載せ、高い画質を実現しているわけだ。
図2 APPRO.PHO社の画質調整技術
伝送性能の高さを評価
APPRO.PHO社では、映像信号の長距離伝送が可能なカメラキットに、ザインエレクトロニクスの「V-by-One HS」に対応した高速シリアル伝送用トランスミッタIC/レシーバICを採用した。ただし、こうしたトランスミッタIC/レシーバICは、ザインエレクトロニクスと競合するアナログ半導体メーカーも製品化している。選択肢は複数ある。その中からなぜV-by-One HSを採用したのか。理由は大きく分けて2つある。
1つは、伝送性能の高さである。V-by-One HSの1レーン当たりの伝送速度は最大4Gビット/秒と高い。一方、競合メーカーも伝送速度が4Gビット/秒の同等品を製品化しているが、伝送速度は4Gビット/秒で固定されているため映像信号入力が800Mビット/秒の場合でも4Gビット/秒に高めて伝送しなければならない。つまり、800Mビット/秒の伝送信号でも、4Gビット/秒に対応したケーブルが必要になる。ところがV-by-One HSは、伝送速度がフレキシブルである。例えば、伝送信号入力が800Mビット/秒の場合、8B10B変換によって伝送速度を1Gビット/秒に高めるものの、それをそのまま送ることができる(注1)。4Gビット/秒まで高める必要はない。従って、1Gビット/秒に対応したケーブルが使えるため、コストを抑えられる。
2つ目は、きめ細かな技術サポートを提供できる点だ。前述のようにザインエレクトロニクスは、台湾に営業拠点を置いており、そこにサポート要員を配置している。このため技術的な問題が発生すれば、すぐにそのサポート要員が駆けつけ、日本で働く技術者と連携を取りながら短時間で解決策を提示できる。一方、競合メーカーは、生産数量が少ないカメラキット開発企業に対しては、あまり手厚いサポートを提供できていないのが実情のようだ。
(注1) 現在販売しているV-by-One HS対応製品は伝送速度がフレキシブルだが、今後伝送速度を固定した製品の市場投入の可能性もあり
1つは、伝送性能の高さである。V-by-One HSの1レーン当たりの伝送速度は最大4Gビット/秒と高い。一方、競合メーカーも伝送速度が4Gビット/秒の同等品を製品化しているが、伝送速度は4Gビット/秒で固定されているため映像信号入力が800Mビット/秒の場合でも4Gビット/秒に高めて伝送しなければならない。つまり、800Mビット/秒の伝送信号でも、4Gビット/秒に対応したケーブルが必要になる。ところがV-by-One HSは、伝送速度がフレキシブルである。例えば、伝送信号入力が800Mビット/秒の場合、8B10B変換によって伝送速度を1Gビット/秒に高めるものの、それをそのまま送ることができる(注1)。4Gビット/秒まで高める必要はない。従って、1Gビット/秒に対応したケーブルが使えるため、コストを抑えられる。
2つ目は、きめ細かな技術サポートを提供できる点だ。前述のようにザインエレクトロニクスは、台湾に営業拠点を置いており、そこにサポート要員を配置している。このため技術的な問題が発生すれば、すぐにそのサポート要員が駆けつけ、日本で働く技術者と連携を取りながら短時間で解決策を提示できる。一方、競合メーカーは、生産数量が少ないカメラキット開発企業に対しては、あまり手厚いサポートを提供できていないのが実情のようだ。
(注1) 現在販売しているV-by-One HS対応製品は伝送速度がフレキシブルだが、今後伝送速度を固定した製品の市場投入の可能性もあり
4K60fps信号を7m送れる
現在、APPRO.PHO社では、V-by-One HSに対応した対応カメラキットを5製品用意している。ここでは、その中から2つの製品を紹介しよう。
1つは、カメラキット「A-10」である(図3)。特徴は、解像度が4K(3820×2160)でフレームレート60fps(フレーム/秒)の映像を長距離伝送できる点にある。「実力的には最長7mの映像伝送が可能。伝送距離については業界トップのソリューションだ」という。CMOSイメージセンサーはソニーの「IMX334」。長距離伝送に向けたV-by-One HS対応トランスミッタICには「THCV241A-P」、レシーバICには「THCV242A-P」を採用した。カメラ・モジュールと受信ボードの間は2本の同軸ケーブルで接続する。
もう1つは、カメラキット「A-07」である(図4)。特徴は4つのカメラ・モジュールを接続できる点にある。受信ボードも4つあり、4本の同軸ケーブルで接続する構成である。いずれも解像度が4K(3820×2160)でフレームレートが30fpsの映像を送ることができる。CMOSイメージセンサーはいずれもソニーのIMX334。V-by-One HS対応トランスミッタICはTHCV241A-P、レシーバICはTHCV242A-Pで、それぞれ4個ずつ使った。監視カメラやセキュリティ・カメラ、車載カメラなどの用途に向ける。
なお、ザインエレクトロニクスはすでに、V-by-One HSに対応したレシーバ回路を4個集積したレシーバIC「THCV244A-QP」を製品化している。これを採用すれば、レシーバ回路は1チップで構成できるようになる。
今後、ザインエレクトロニクスとAPPRO.PHO社は、両社の協業体制をより強化することで、多種多様なニーズに対応したカメラキットを市場に提供していく考えだ。
以上
1つは、カメラキット「A-10」である(図3)。特徴は、解像度が4K(3820×2160)でフレームレート60fps(フレーム/秒)の映像を長距離伝送できる点にある。「実力的には最長7mの映像伝送が可能。伝送距離については業界トップのソリューションだ」という。CMOSイメージセンサーはソニーの「IMX334」。長距離伝送に向けたV-by-One HS対応トランスミッタICには「THCV241A-P」、レシーバICには「THCV242A-P」を採用した。カメラ・モジュールと受信ボードの間は2本の同軸ケーブルで接続する。
図3 4K60fps対応のカメラキット
もう1つは、カメラキット「A-07」である(図4)。特徴は4つのカメラ・モジュールを接続できる点にある。受信ボードも4つあり、4本の同軸ケーブルで接続する構成である。いずれも解像度が4K(3820×2160)でフレームレートが30fpsの映像を送ることができる。CMOSイメージセンサーはいずれもソニーのIMX334。V-by-One HS対応トランスミッタICはTHCV241A-P、レシーバICはTHCV242A-Pで、それぞれ4個ずつ使った。監視カメラやセキュリティ・カメラ、車載カメラなどの用途に向ける。
図4 4個のカメラを接続できるカメラキット
なお、ザインエレクトロニクスはすでに、V-by-One HSに対応したレシーバ回路を4個集積したレシーバIC「THCV244A-QP」を製品化している。これを採用すれば、レシーバ回路は1チップで構成できるようになる。
今後、ザインエレクトロニクスとAPPRO.PHO社は、両社の協業体制をより強化することで、多種多様なニーズに対応したカメラキットを市場に提供していく考えだ。
以上