THine Value IOHA:Bの新活用法「リレー型」、データの長距離伝送と途中乗車/下車を実現

2026.09.17
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 ザインエレクトロニクスが製品化するシリアル・トランシーバIC「THCS251、THCS253A、THCS254A」。これらは「IOHA:B(アイオーハブと発音)」という製品シリーズ名で広く知られている。
 IOHA:Bの特徴の1つは、汎用性が高いことにある。言い換えれば、アイデア次第でさまざまな使い方ができるということだ。これまでもザインエレクトロニクスは産業機器メーカーなどに向けてIOHA:Bの各種活用法を提案してきた。しかし、新しい活用法はまだ存在する。それは「リレー型」という活用法である。リレー型とは、どのような使い方で、どのようなメリットがあるのか。以下で詳しく説明していこう。
 

手軽に全二重通信を実現

 まずは、IOHA:Bについて簡単に復習しておく。IOHA:Bは、トランスミッタ(送信器)とレシーバ(受信)を1チップに集積したシリアル・トランシーバIC(8B10BトランシーバIC)である(図1)。
 
図1 シリアル・トランシーバIC(IOHA:B)の使い方

 基本的な使い方は、このシリアル・トランシーバICを2つ用意し、一方をプライマリ側に、もう一方をセカンダリ側に搭載し、それらの間を2組の差動ライン(差動ケーブル)で結ぶというもの。これだけでビア・ツー・ピア(Peer to Peer)の伝送システムを構成できる。しかもアップリンク(上り)とダウンリンク(下り)による全二重通信を実現可能だ。
 プライマリ側では、パラレルI/O端子に32~35ビットの映像信号や低速の制御信号などを入力する。すると入力された信号をシリアライザで自動的にシリアル化され、1組の差動ライン(アップリンク)を介してセカンダリ側に送る。セカンダリ側は、この信号を受信してデシリアライザで自動的に元に戻し、映像信号や制御信号などに分割してパラレルI/O端子から出力する。さらにダウンリンクを使って、制御信号などをプライマリ側に送ることができる。
 

AOCで長距離、ミリ波や光空間でケーブルレス

 IOHA:Bは、すでに多くの電子機器メーカーに採用されている。好評の理由としては、上記のような基本的な使い方で「ボード間や機器間の信号配線をすっきり集約したい」「差動伝送にしてノイズ耐性を高めたい」「差動伝送にしてデータを最大15m程度の長い距離を送りたい」といった「お困りごと」を手軽に解決できる点が挙げられる。
 しかし、理由はそれだけではない。IOHA:Bと組み合わせる伝送媒体を工夫すれば、活躍の場をさらに広げられる点も評価されている(図2)。
 
図2  さまざまな使い方が可能なIOHA:B

 例えば、差動ケーブルの代わりに光ファイバ伝送(AOC:Active Optical Cable)を使えば100m超という非常に長い距離でもデータ伝送が可能になる。ミリ波通信モジュールや光空間伝送モジュールを使えば、ケーブルレスを実現できる。ロボットの関節などにおけるデータ伝送に最適だと言えるだろう。
 さらにザインエレクトロニクスでは、IOHA:Bの接続方法を工夫すれば、リング型ネットワークを構築できることを提案済みである(リング型の詳細解説はこちら)。例えば、シリアル・トランシーバIC(THCS251)を搭載したボードを6枚用意し、1つをマスター、5つをスレーブとする。そしてマスターから5枚のスレーブを数珠つなぎに接続し、最後にマスターに戻す。こうしてリング型ネットワークを構築する。こうすることで、マスターと各スレーブをピア・ツー・ピアで接続するよりも、差動ケーブルの使用量を大幅に減らすことができ、配線を大幅にすっきりさせることが可能になる。現状では、1つのマスターに対して最大8つのスレーブを接続できる。
 

データの途中乗車/下車が可能

 今回提案するリレー型は、リング型にはない特徴を備えた新しい活用法である。
 リレー型は、2つのシリアル・トランシーバIC (THCS253A)によるピア・ツー・ピア接続を基本形とし、それを繰り返す構成になる(図3)。
 
図3 リレー型接続

 つまり始点、中継点、終点という3つの地点の間を、それぞれ差動ケーブルでピア・ツー・ピア接続する。従って、始点にはTHCS253Aを1つ、中継点にはTHCS253Aを2つ、終点にはTHCS253Aを1つ搭載する。なお中継点に実装した2つのTHCS253Aの間は、ボード上でGPIO(汎用入出力)を使ってつなぐ。
 リレー型のメリットは大きく2つある。1つは、始点から終点に送信するデータに対して途中乗車と途中下車が可能なことである。具体的には、始点から終点にデータを送信する途中で、中継点において新規データを追加したり、送信データの一部を出力したりすることができる。このため、中継点にセンサーを実装しておき検出したデータを送信データに追加することや、送信データの一部を出力して中継点に接続したモーターを駆動することや、LEDを点灯することなどが可能になる。
 もう1つは、データの伝送距離を延ばせることだ。一組のピア・ツー・ピア接続で最大15mのデータ伝送が可能である。従って、二組のピア・ツー・ピア接続を構成するため最大30mのデータ伝送を実現できることになる。
 なおザインエレクトロニクスでは、始点や中継点、終点のコネクタにシリアル・トランシーバICを内蔵したアクティブケーブルをカスタム設計で対応することが可能である。これを使えば、今回紹介したリレー型の接続をより簡単に実現できるほか、ユーザー側ですでに持っているシステムのプリント基板を再設計せずに簡単に省配線を実現できるようになる(図4)。
 
図4  アクティブケーブルも実現可能

 ところで伝送距離を延ばすにはリピーターICを使う方法が広く知られている。伝送距離を延ばすという目的だけなら、リピーターICを採用する方がシンプルだ。しかしリピーターICは、伝送波形を整形することで伝送距離を延ばす手法を採用しているため、送信データの途中乗車や途中下車はできない。このため、長距離伝送に加えて、データの途中乗車と途中下車が必要なアプリケーションには、IOHA:Bを使ったリレー型接続が最適と言えるだろう。
 

クレーンゲームなどに向ける

 最適なアプリケーションとしては、アミューズメント施設などに置かれているクレーンゲームなどが挙げられる。クレーンゲームは、筐体の外形寸法がかなり大きい。IOHA:Bのリレー型を採用すれば伝送距離を最大で30mまで延ばせるため、かなり余裕を持って設計できるはずだ。
 さらにクレーンゲームには、アームやX軸移動機構、Y軸移動機構、Z軸移動機構などが搭載されており、それらを駆動するボードはホストボード(メイン・コントローラを搭載)と直接接続して駆動している。このため信号配線がかなり煩雑になっているのが実情だ。これに今回提案したIOHA:Bのリレー型接続を適用すれば、アーム用ボード(始点)、中継ボード(中継点)、ホストボード(終点)にまとめることができ、クレーンゲームとしての機能を一切削ることなく、信号配線が大幅にすっきりさせることが可能になるだろう(クレーンゲームの機能によっては中継ボードが複数枚になる可能性がある)。
 このほか、筐体の外形寸法が大きい産業機器などにもIOHA:Bのリレー型接続は適している。長距離伝送が可能な上に、データの途中乗車と途中下車が可能だからだ。さら適している理由がもう1つある。それは、現在でも産業機器で盛んに採用されているアナログセンサーを接続しやすいことである。もちろん、シリアル・トランシーバICには直接接続できないが、その近くにA-Dコンバータを内蔵したサブマイコンを実装しておけば、アナログセンサーを簡単に接続できる。温度センサーや気圧センサー、CO2センサー、温湿度センサー、サーミスタなどの出力をすべてデジタル化して束ねることができる(図5)。
 
図5  アナログセンサーとの接続が容易に

フィジカルAIをワンストップで

 最後に、フィジカルAIについて言及しておこう。現在、産業機器の分野では、フィジカルAIが注目を集めている。これは、カメラを含むさまざまなセンサーで取得したデータを基に、ロボットアームなどの物理デバイスの動作を最適化するシステムである。
 ザインエレクトロニクスは、このフィジカルAIシステムに必要なハードウェアとソフトウェアをワンストップで提供することが可能だ。ハードウェアについては米Qualcomm社のSoC(System on a Chip)を搭載した米Thundercomm社のシングルボードコンピューター「RUBIK Pi」を用意しており、これをIOHA:Bのリレー型接続の終点(ホストボードなど)に組み込める。ソフトウェアについては、パートナー企業から提供することが可能だ。

以上