VBOC⇔カメラリンク相互変換によるコネクタの小型化、ケーブルの細線・長尺化

カメラリンクではBase Configurationで11対、Midium Configurationで16対、Full Configurationで21対のLVDS信号対を使用するため、Base Configurationでは26pinコネクタ1個、Midium/Full Configurationでは26pinコネクタ2個とそれに応じたカメラリンクケーブルが使用されます。
また、カメラリンクはクロック同期式シリアル伝送のため、クロック信号とデータ信号間のスキューによる伝送エラーとそれによるケーブル長の制限が度々問題になります。

VBOCではこれらの問題をすべて解決可能です。

THCV333/334-Qを使用してカメラリンク信号をVBOCに変換することで、Full Configuration相当の画像信号を最大3対に抑えることができるため、カメラリンクより小型で安価な汎用コネクタとケーブルが使用可能です。
例)ヒロセ電機IXコネクタ(※Bタイプ)、HDMI、DisplayPort、USB3.0等、3対以上の差動対を有する汎用コネクタ・ケーブル
※VBOCで差動2対以上使用する場合は、CAT6/6A等の産業用イーサネットケーブルは使用できません。カメラリンク同様に差動対毎にシールドされたケーブルとIXコネクタBタイプを組み合わせてご使用ください。
 

  Camera Link VBOC
Base Configuration LVDS 11対 CML 1対
Midium Configuration LVDS 16対 CML 2対
Full Configuration LVDS21対 CML3対

 

カメラリンク接続とVBOC接続の構成比較


加えてVBOCはクロックエンベデッド方式のため、カメラリンクの様にクロック信号とデータ信号が物理的に異なる伝送路を使用しません。そのためクロックとデータ間のスキューという問題から解放されケーブルの長尺化が期待できます。

またカメラリンク規格におけるCC1~4とSerTC/SerTFGもTHCV333/334-Qを介して通信可能ですが、遅延や通信速度に注意が必要です。カメラリンクの画像クロック速度にもよりますが、数usec程度の遅延並びに遅延量のバラつきが生じます。SerTC/SerTFGの通信速度は115.2Kbps以下(許容ボーレート誤差4%以下)でご使用ください。

トリガ信号など上記遅延量バラつきが許容できない場合は専用線が必要になります。この専用線としてLVDS信号を1対追加しなければなりませんが、VBOCの3対にトリガ信号専用線1対を追加しても合計4対であり、先に述べた汎用コネクタ・ケーブルで十分に対応できます。

カメラリンクにおける10mケーブルへの対応

カメラリンクインターフェースにおいて10mケーブル接続に苦労され弊社へ相談されるケースは少なくありません。この様な場合はセンサカメラのカメラリンク出力ドライバとしてTHC63LVDM83Eをお勧めしています。THC63LVDM83EではLVDS出力バッファの駆動方式に一般的なものとは異なる弊社独自の駆動方法を採用しており、負荷の大きな長いケーブルを使用した際にFPGAや他社カメラリンクドライバと比べて良好な結果が得られる場合があります。
 


小型LVDSドライバIC“THC63LVDM83E”によるCameraLink Full Configuration接続の安定化対策
 

小型低消費電力トランスミッタ

その他に特徴的なカメラリンク対応送信ICとしてTHC63LVDM87があります。この製品は先述のTHC63LVDM83Dと機能互換性を保ちながら、同等品として世界で初めて1.8V動作を実現し、従来品の1/2以下の消費電力とすることで発熱が大幅に抑えられています。
 

(例) 動作クロック周波数66MHzにおける消費電力(Typ)
他社従来品 : 122mW@3.3V
THC63LVDM87 : 52mW@1.8V
 

加えて5mm×5mmのTFBGAパッケージとすることで小型のカメラヘッドやFull Configurationが必要となる高解像度カメラに最適な製品となっています。
 


従来品との外形寸法比較イメージ
 

LVDSレシーバにおけるフェイルセーフ回路

フレームグラバやコントローラにカメラが接続されていない、あるいは接続されているがカメラに電源が投入ていない状態ではカメラリンクレシーバの出力状態が確定しません。しかしカメラリンクレシーバの出力に搭載されたデバイスではこの様な場合でも論理が確定していることが望まれるため、カメラリンクレシーバのLVDS入力端子付近にフェイルセーフ回路と呼ばれるプルアップ/プルダウン抵抗を配置しすることでLVDSとして論理を確定させる方法がとられてきました。

しかしこの方法では全てのLVDS入力端子に100Ωの終端抵抗に加えプルアップ/プルダウン抵抗が必要であり、基板配線設計を困難にします。加えて論理H/L電圧を生成するためにLVDS+とLVDS-では異なる抵抗値を使用するため差動間の不均衡が生じます。

そこでTHC63LVDF84C及びTHC63LVDR84Cではこの様な問題を解消するために差動間での不均衡がないフェイルセーフ回路を内蔵しました。
 


THC63LVDF/R84Cに内蔵されたフェイルセーフ回路
 

上図点線枠内のフェイルセーフ回路ではLVDS入力端子がオープンやハイ・インピーダンス状態の場合にLVDS_VCC電圧となります。コンパレータでこのLVDS入力端子電圧と内部のフェイルセーフ基準電圧を比較し、入力端子電圧の方が高ければTHC63LVDF84C / THC63LVDR84CのLVCMOS出力をLowに確定します。

この機能はTHC63LVDF84C / THC63LVDR84C以外のカメラリンクレシーバ製品に搭載されています。これまでTHC63LVDF84C / THC63LVDR84Cをお使いのお客様におきましては、新規設計時にTHC63LVDF84C / THC63LVDR84Cをお使い下さい。
 

 

カメラリンク延長器・エクステンダー

ザインエレクトロニクス製トランスミッタとレシーバ製品の組み合わせであれば、10m程度のカメラリンクケーブルで使用される例もありますが、ケーブル品質に大きく左右されます。そこでより安定的な伝送を行うためには、リピーターICであるTHC63LVD1027を使用する場合もあります。
 


カメラリンク リピータIC ”THC63LVD1027


標準的なカメラリンクBase Configurationに対応するケーブルは差動12対のSTPケーブルで構成されますが、THCS251では2対のSTPケーブルのみで画像信号(計24bit)、同期信号(計4bit)、CC1/2/3/4、SerTC、SerTFGを送ることが出来るためカメラリンクケーブルに比べて安価なLANケーブルやUSBなどの細径ケーブルが使用可能になります。加えてイコライザが内蔵されているためケーブルの延長も期待できます。またこのイコライザはケーブル長に応じてイコライザ強度が自動調整されるため、機器設置場所の変更によりケーブル長が変更された場合でも安定動作します。
 

細軽ケーブルを使用可能なカメラリンク延長器(上段:送信機、下段:2入力受信機)

※SerTC/TFGにてシリアル通信を行うにはカメラからの画像クロック出力が必要です。
 

ギガビットシリアル信号の伝送にはSTPケーブルを使用して下さい。例えばCat7 LANケーブルが使用できます。ただしRJ45コネクタはインピーダンス特性が良くないため、ギガビット伝送用に最適設計された産業用LANコネクタであるIXコネクタ等のインピーダンス特性の良いコネクタをご使用ください。ケーブル長に関しては伝送周波数やケーブル/コネクタ/基板特性によりますが、条件が整えば50m程度の伝送が期待できます。
 

Full Configurationの場合は下図のようになります。カメラリンクの場合は26pinケーブルが2本必要ですが、VBOC信号に変換することで信号線対は4対しか必要ないため、Cat7 LANケーブルなどのS/FTPケーブル1本で済みます。
 


Full Configuration 延長器(上段:送信機、下段:受信機)
 

上記構成では汎用的なLANケーブルを使用していますが、さらに細い沖電線製HSDS Hケーブルを使用した場合でもFull Configuration 85MHzの信号を20m以上延長することができます。

また更なるケーブルの延長が必要な場合は光オプティカルケーブルの使用が考えられますが、THCS251のギガビットシリアル信号はDCバランス信号であり光化が容易です。殆どの場合、AC結合コンデンサを介して光電変換ICに直接接続がすることができます。