ファームウェア開発の負担を軽減する方策とは? <解決編>

高性能で小型軽量のARグラスを短期間開発した事例
FPGAを使わず、さらにファーム開発の負担を軽減する方策とは?

 
解決のポイント
①1200万画素に対応したISPを見つけ出す
②CDKの使用で、ノンプログラミングでファームウエアを開発可能に
③ARグラスに必要な画像処理機能を簡単に搭載できるようになる

最適なISPをついに発見

1200万画素のCMOSイメージ・センサーに対応したISPを入手できないのであれば、FPGAを採用するしかほかに方法はありません。しかし、K氏はFPGAの採用をなかなか決断できない。FPGAの採用による開発作業の負荷増大は容易に想像できたからです。開発でトラブルがあれば、市場投入時期が大幅に遅れ、市場獲得のチャンスを逃してしまいかねません。

このほかに何か良い解決方法はないのか・・・。あらゆる可能性を検討していたときです。Y先輩が外出先から帰ってきました。都内で開催されているセンシング技術関連の展示会に参加していたとのこと。Y先輩は、束になった書類の中から、1枚のパンフレットを引き抜いてK氏に手渡し、「たまたま通りかかったザインエレクトロニクスのブースにISPの展示があったので、パンフレットをもらってきた。このTHP7312は1200万画素に対応しているようだ。詳しくは先方に聞いて」と語りました。

            

まさに「渡りに船」でした。ISPが使えるのならば、画像処理を実行するハードウエア回路を新たに設計する必要はありません。もちろん、ファームウエアを開発する必要はありそうですが、それでも開発の負担は大幅に削減できそうです。K氏は、パンフレットに記載してあった電話番号にすぐにダイヤルしました。

ファームウエア開発もほぼ必要なし

それから数日後。ザインエレクトロニクスの営業担当者と技術者が光学機器メーカーのA社にやってきました。
「ISPか、FPGAか」で悩んでいたK氏なので、抱えていた問題点はすでに明確になっています。質問を矢継ぎ早に営業担当者と技術者に浴びせ、問題点をひとつ一つクリアしていきます。
「THP7312を採用すれば大丈夫。ARグラスの開発を本格的にスタートできる」
K氏はホッと胸を撫で下ろしました。

さらに、思いもよらない朗報がありました。技術者の説明によると、ザインエレクトロニクスが提供する「CDK(カメラ開発キット)」を利用すれば、GUIツール上で必要な情報を入力するだけでファームウエアを記述できるといいます。ほぼノンプログラミングでファームウエアが開発可能というわけです。もちろんCDKを利用することで、ARグラスに必要不可欠な画像処理機能を漏れなく搭載できるとのこと。確実に、開発期間を短縮できそうです。

            

K氏が構想したARグラスの開発は、無事、成功裏に終わりました。A社における次世代の事業の柱になれたのかどうか。その答えが出るのは、もう少し先になりそうです。しかしK氏はすでに、ザインエレクトロニクスのISPとCDKを活用し、新しいアイデアを盛り込んだARグラスの開発に着手しています。