THine Value ファームウェア開発の負担を軽減する方策とは?
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FPGAを使わず、さらにファーム開発の負担を軽減する方策とは?
デジカメ市場からの撤退を余儀なくされた光学機器メーカーのA社。新たな事業の柱として候補に上がったのは「ARグラス」だった。競合他社製品との差別化を図るため、高性能/高機能化と小型軽量化を同時に達成させたARグラスの開発が始まった。
課題
デジカメに代わる事業の柱を創出せよ
かつての栄光は、もう遠い過去のこと。光学機器メーカーのA社は、得意とする小型軽量化技術を存分に生かしたデジタル・カメラ(デジカメ)を製品化し、世界中で大きな売り上げを得ることに成功しました。その結果、デジカメは同社の屋台骨を支えるほどの製品に成長したのです。
ところが2000年代後半から、売れ行きが急速に鈍化してきたのです。原因は明らかでした。スマートフォンに搭載されたカメラ機能が高性能化したため、デジカメをわざわざ購入する一般ユーザーが激減してしまったからです。
このためA社のデジカメの売上高は、時を重ねるごとに減少し、遂には市場からの撤退を余儀なくされてしまいました。それと時を同じくして、デジカメに代わる新しい事業の柱を生み出すことを目的に設置されたのが「新規事業開発室」です。新規事業開発室には、社内のエース級のエンジニアが集結しました。その中でも大きな期待を集めていたのが、若手エンジニアのK氏でした。
ARグラスの開発に着手
K氏には、新しい事業の腹案がありました。それは「AR(Augmented Reality)グラス」です。ARグラスとは、目の前にある現実の風景に、文字や画像などの情報を重ねて表示するもの。すでに一部のメーカーが製品化していますが、まだまだ一般ユーザーに広く普及する段階には達していません。A社が得意とする光学技術や小型化技術、実装技術などを駆使し、短期間で製品を開発できれば、市場を席巻する可能性が残っていると言えるでしょう。
K氏の考えるARグラスとは、解像度が高い上に高機能で視野角が広く、しかも小型軽量化を実現したというものです。装着したときの違和感が少なく、長時間装着していても疲れない。このため、一般ユーザーに受け入れられる可能性は高いと言えます。
設計に着手したK氏。まずは、CMOSイメージ・センサーの選択から始めました。K氏の考えるARグラスを実現するには、画素数の多いCMOSイメージ・センサーが必須です。解像度が高く、ズーム機能を搭載したARグラスを想定していたからです。
「500万画素程度だとズーム時に画面がぼけてしまう。少なくとも1000万画素は譲れない」
そこでK氏は、M社の1200万画素CMOSイメージ・センサーをチョイスしました。
次はイメージ・シグナル・プロセッサ(ISP)の選択です。ISPは、CMOSイメージ・センサーやレンズなどを制御して、生の画像データ(RAWデータ)を出力させ、これに対して、レンズなどの光学系による収差の補正や、明るさやコントラストなどの調整といった画像処理を実行します。これもARグラスに必要不可欠な構成要素です。ところが、ここで大きな難題にぶつかってしまうことになります。
FPGAでは開発作業が大変
その難題とは、1200万画素と多い画素数に対応した小型ISPが市場に存在しないことです。世界のさまざまなISPベンダーのウェブサイトを確認しましたが、対応可能な画素数は多くても500万画素程度。これでは、K氏が構想するARグラスは実現できません。
そこで、新規事業開発室で隣の席に座っているY先輩に相談しました。すると、「それは、FPGAで実装するしかないなぁ」という回答が返ってきました。ある意味、予想通りの回答でした。ISPが使えなければFPGAを使うしかないことはK氏も分かっていました。しかし、FPGAを採用すれば、開発作業の難易度は大幅に高まります。画像処理を実行するハードウエア回路とファームウエアの開発が必要になるからです。
「いまの開発リソースでは、FPGAの採用は現実的ではない。さて、どうしたものか・・・」
①デジカメに代わる事業の柱を生み出すためにARグラスの開発に着手
②高解像度化とズーム機能搭載を達成すべく1200万画素センサーを採用
③1200万画素センサーに対応したISPがない。FPGAでは開発の負担大