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ザインエレクトロニクスに集う社員の熱い思いを語るコラムやストーリー、
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「V-by-OneⓇ」SerDesの技術は液晶テレビのアプリだけではない、 通信/コンピュータ/産業機械などの高速インターフェースにも適用可能な技術

ザインエレクトロニクスは、1レーン当たりの伝送速度が最大16Gビット/秒(bps)と高速なSerDesおよびシリアル・インターフェース技術「V-by-OneⓇ US」を開発した。前世代の「V-by-OneⓇ HS」と比較すると伝送速度は4倍となる。8K解像度の液晶テレビなどにおいて、液晶タイミング・コントローラICとビデオ処理ボードを接続するインターフェースに使用する。ただし、アプリケーションはそれだけではない。「V-by-OneⓇ US」で使用されている物理層の技術は通信機器やコンピュータ機器などで、A地点とB地点を接続する高速インターフェースにも転用可能な技術だ。今回は、V-by-OneⓇ USの特徴や構成を解説し、高速インターフェースを使用する他のアプリケーションにもこの物理層技術が応用できる理由を解説する。

ブランドイメージの光と影

ザインエレクトロニクスといえば液晶テレビのデジタル・インターフェース「V-by-OneⓇ HS」を提供する半導体メーカーというイメージが非常に強い。企業イメージが確立することは決して悪いことではない。液晶テレビの開発を取り組む電子機器メーカーは、液晶タイミング・コントローラIC(T-CON)とビデオ処理ボードを接続するインターフェースを検討する際には必ず、「ザイン」という企業名や「V-by-OneⓇ HS」というブランド名が頭をよぎるからだ。

しかし、その一方で、デメリットがあるのも事実である。それは「V-by-OneⓇ HSは液晶テレビ専用」という誤ったイメージを持たれてしまうことだ。従って、筐体間や基板間を接続する高速のシリアル伝送や通信機器などの用途では、「ザイン」という選択肢が漏れてしまう危険性が高い。

最初のターゲット市場が液晶テレビだった

実際のところ、V-by-OneⓇ HSは、液晶テレビのインターフェース以外のさまざまな用途に使用されているデバイスだ(図1)。A地点からB地点に情報を伝達する高速の汎用シリアル・インターフェースとし様々なアプリケーションで採用されている。
 
図1 V-by-OneⓇ HS アプリケーション例

技術的に見れば、V-by-OneⓇ HSは単なる「SerDesチップ」である。SerDesとは、シリアライザー(Serializer)とデシリアライザー(Deserializer)を組み合わせた技術用語である。シリアライザーでパラレル信号をシリアル信号に変換し、1組の信号ラインを使って高速でデータを送信する(図2)。そして、受信したデータをデシリアライザーでシリアル信号からパラレル信号に戻す。
 
図2 シリアライザー(Serializer)とデシリアライザー(De-serializer)

ザインエレクトロニクスは、市場が急拡大しつつあった高精細液晶テレビという市場にいち早く照準を合わせて「液晶テレビの標準規格品」として高速シリアルインターフェースのV-by-OneⓇ HSシリーズを製品化した。ただし、その基本的な要素は半導体メーカーが様々なアプリケーション向けに製品化しているSerDesチップと同じものである。

確かに、V-by-OneⓇ HSでは、「R(Red)(0-9)、G(Green)(0-9)、B(Blue)(0-9)」や「Vsync、Hsync、De」といった液晶テレビ筐体内のT-CONとビデオ処理ボードを接続するTTL/CMOS やLVDS SerDesのインターフェースの信号名をそのまま使用している。しかしそれはあくまで、液晶テレビというアプリケーションで適用することを想定して付けた名称にすぎない。ほかの信号名を使う汎用の高速シリアル・インターフェースでも、信号名に縛られることなく活用することが可能だ。(ホワイトペーパー:一般的なデータ通信におけるV-by-One® HSの活用 参照)

高画質化が伝送速度を引き上げる

しかも、見逃せないのは、液晶テレビのデジタル・インターフェースのデータ伝送速度の高さである。液晶テレビの高画質化が急ピッチに進んでいるため、それに伴いインターフェースのデータ伝送速度の要求も急速に高まっている。具体的には、高解像度化とハイ・フレーム・レート(HFR)化、ハイ・ダイナミック・レンジ(HDR)化の3つの動きが同時進行中だ。

この結果、インターフェースのデータ伝送速度は極めて高いレベルに到達している。例えば、4K、60フレーム/秒、10ビットRGBの画像信号の場合、スループットはV-by-OneⓇ HSでは24Gビット/秒が必要となる。V-by-OneⓇ HSでは、3Gビット/秒×8レーンで、この高速なインターフェースを実現していた。「しかし、ユーザーは60フレーム/秒では満足していない。例えば大画面でサッカー中継を見ると、60フレーム/秒ではボールがぼやけたように見えるが、120フレーム/秒ではくっきりとし、さらに臨場感が増す。」(ザイン)。4K、120フレーム/秒、10ビット・カラーになれば、スループットは2倍の48Gビット/秒に達する。

さらに解像度については、世界的に8Kへの移行が始まっている。すでに日本国内では、NHKにおいて8Kに対応した試験放送が開始された。8Kになれば、V-by-OneⓇ HSでのスループットは60フレーム/秒・10ビット・カラーで96Gビット/秒に、120フレーム/秒・10ビット・カラーで192Gビット/秒に到達する。

16Gビット/秒×16レーンへの対応完了

すでにザインエレクトロニクスでは、8K、120フレーム/秒の画像信号に対応するソリューションを確立している。それがV-by-OneⓇ HSの次世代版である「V-by-OneⓇ US」だ。1レーン当たりの最大データ伝送速度は、V-by-OneⓇ HSの4倍の16Gビット/秒に達する。これを16レーン束ねることで8K、120フレーム/秒の画像信号に対応する。なお、色深度が12ビット・カラーであれば1レーン当たり14.85Gビット/秒、10ビット・カラーならば11.88Gビット/秒となる。

つまり、こうした事実は、すでにザインエレクトロニクスでは16Gビット/秒×16レーンの汎用インターフェース技術を確立していることを意味する。この高速伝送の物理層技術は液晶テレビのデジタル・インターフェースだけでなく、長いケーブルを介した画像伝送やA地点とB地点を高速に結ぶデータ伝送のインターフェースにもそのまま転用できる技術である。

FFE、CTLE、DFEを活用

それでは、V-by-OneⓇ USはどのような物理層の技術を使ってこの高速化を実現しているのだろうか。基本的には、10~28Gbps帯域のデータ通信アプリケーションのSerDesやリタイマー(CDR)で一般的に使用されている複数のシグナル・コンディショニング技術を用いて実現している。送信回路(トランスミッタ)にFFE(Feed-Forward Equalizer)を、受信回路(レシーバ)にDFE(Decision Feedback Equalizer)とCTLE(Continuous Time Linear Equalizer)を適用している(図3)。
 
図3 送信回路にFFE、受信回路にCTLEとDFEのシグナル・コンディショニングを適用

ここで、それぞれの技術を簡単に説明しよう。トランスミッタに使用されているFFEは、デエンファシスやプリエンファシスの機能を包含しており、実際はそれよりもきめ細かな波形調整が可能な技術である。伝送路で減衰してしまう高周波成分をあらかじめ送信端で増幅しておく。具体的には、複数の遅延(Delayブロック)による各タップを用意し、1UI(ユニット・インターバル)ごとに各タップの任意の係数(比率)で増幅や減衰させた信号を⊕部で足し合わせ、出力している(図4)。
 
図4 FFE(Feed Forward Equalizer)の仕組み

こうすることで波形の(プリ・デ)エンファシスだけでなく、プレシュートを含めた任意の送信波形を作ることができ、受信端でEYEの時間軸方向の開口が大きくなる様に設定する。

受信側のCTLEは、日本語では連続時間リニア・イコライザーと呼び、伝送路で失われた高周波成分を増幅して補償する技術である(図5)。つまり、伝送路のローパスフィルター特性を補償するハイパスフィルターとアンプとして機能する。
 
図5 CTLE(Continuous Time Linear Equalizer)の仕組み

レシーバ側に適用したもう1つの技術であるDFEは、受信端波形のシンボル間干渉(ISI:Inter Symbol Interference)のジッターを打ち消す技術である。FFEと同様に、受信信号に複数のディレイをかけた各信号(タップ)を用意する(図6)。そして受信した波形と理想的な波形との誤差が最小になるように1UIごとに各タップの係数を求めて、これを受信信号に対してフォードバックをかける。こうすることでジッターを低減しアイの開口が大きな信号波形に戻すわけだ。
 
図6 DFE(Decision Feedback Equalizer)の仕組み

なお、 CTLEとDFEの役割分担としては、完全にアイが閉じてしまった受信波形に対して、まずはCTLEを適用してアイをある程度開ける処理を施す。その後、DFEでジッターをさらに低減し、アイの開口をより大きくしている。

FFC/コネクタ・メーカー各社とV-by-OneⓇ US伝送路を共同開発

さらにザインエレクトロニクスは、V-by-OneⓇ USのチップ開発だけにとどまらず、高速デジタル・インターフェースの伝送路(シグナル・パス)であるフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)とコネクタの開発にもFFC/コネクタ・メーカーと協力して取り組んでいる。FFCメーカーとコネクタ・メーカーと共同で、広帯域化の技術開発に取り組み、すでに16Gビット/秒×16レーンのデータを1m以上伝送できる伝送路技術を確立している。

この広帯域FFCでは、材料と構造を最適化している。材料には誘電正接(tanδ)と比誘電率(εr)がいずれも小さいものを採用して基本的な損失特性を向上させ、また伝送路のW(幅)・S(スペース)・T(厚さ)のレイアウト(図7)を工夫し、伝送損失、反射損失、クロストークを最小限に抑えた。
 
図7 16Gビット/秒に対応したFFCの基本構造(両面シールドタイプ)

レセプタクル・コネクタについても、現行品の形状を踏襲しながらも、基板とのはんだ接続部の改善や金属部分の改善、コネクタ内配線長の調整などでインピーダンス整合を確保し、高速時の信号反射を低減している。

ただし、16Gビット/秒×16レーンの汎用インターフェースを構築する際の課題はまだ残っているという。それは、V-by-OneⓇ US対応チップやコネクタを実装するプリント基板の設計である。このプリント基板の設計にザインエレクトロニクスが介入することは難しい。あくまで、ユーザー側の作業だからだ。ザインエレクトロニクスによると、「プリント基板の材質と層構造が電気的な特性に大きく影響するため高速信号のアートワークに注意が必要であり、また各部品との接続点のインピーダンス・コントロールが重要」という。

次世代デバイスの開発に着手

現在、ザインエレクトロニクスでは、V-by-OneⓇ USを大きく上回る伝送速度を備える次世代デバイスの要素技術開発に取り組んでいる。高速インターフェース向けデバイスのラインナップを拡充することで、「高速インターフェースのザイン」という企業イメージを固めていく考えだ。

伝送速度が速いデバイスを製品化するインパクトは極めて大きい。理由は2つある。1つは、技術力の高さをアピールできることだ。企業イメージに高い技術力が加われば、高速インターフェース市場における認知度をスムーズに高められるだろう。

もう1つの理由は、潜在市場の規模が大きいことだ。現在、通信インフラ市場やデータセンター市場でも、より高い伝送速度を持つインターフェース技術のニーズが高まっている。通信インフラ市場では、5G(第5世代)へ対応が求められているため、映像信号などを遅延なく伝送することが求められている。データセンター市場では、AI(人工知能)プロセッサーやGPUなどの演算処理能力が極めて高くなっているため、チップ間のデータ伝送により広い帯域が必要になっている。
1レーン当たり16Gビット/秒を大きく上回るデバイスの実用化は、「液晶テレビのザイン」から「高速インターフェースンのザイン」に企業イメージが切り替わるタイミングになるかもしれない。

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