THine Value <ソリューション開発秘話> ISP開発ツール「RDK」に託す、エンジニア達の想い---Vol.3

2016.03.02
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ザインエレクトロニクスは、画期的なISP開発ツール「RDK」(Reference Design Kit)を世界中に送り出すため、企画段階から海外を飛びまわってグローバルに展開する道を模索した。最終回となる今回は、「RDK」のマーケティングにまつわるエピソードを、製品企画部・桑山 克己、営業部・飯塚 卓洋に聞いた。

お客様はRDKに何を望むのか?……顧客ニーズヒアリング行脚


zoomRDK(Reference Design Kit)のリリースから遡ること約1年、桑山・飯塚の2人は顧客ニーズをヒアリングするため、アジア数カ国を巡る“顧客行脚”を開始した。

「RDKと親和性の高そうな企業を、パートナーである米国サイプレスセミコンダクタ社から紹介してもらい、1日に2~3社、4日間で全9社を訪問しました。まず深セン、次が台湾、そして韓国、北京、最後は上海へ。ペーパーマシンで手ごたえを探り、その後もプロトタイプを見せに行くなど、アジア各国へ3カ月に2回の頻度で12回行きましたね」(桑山)

訪問した企業の規模は様々で、中には“おんぼろアパートの奥深くにある実験室”のようなところもあったという。その時の様子を、桑山はこう回想する。

「ここは中国の企業だったのですが、ごく少人数で開発するのでコストがかからず、洗練さはなくてもひとつの製品を仕上げるまでがものすごく速い。訪問した時も、社長さんが1人で机に向かって半田ごてで作業していたんです。『これがメイド・イン・チャイナか』と感心させられました」
また、中国ではほとんど英語が通じないため、討議の場は英語・中国語・日本語が入り乱れていたとか。
 
zoom「専属の通訳はいません。各々が使える言語を駆使してコミュニケーションを取ります。もちろん、時には誤解が生まれてケンカのような状態になることも。大変でしたがその分、毎回、数時間におよぶ内容の濃いものになりました」(飯塚)

そうした討議で得た情報を元に開発続行の可否を決めるわけだが、翌週本社で議論、などといった悠長なことはしない。客先の熱い議論の余韻が残ったまま、出張最終日の朝、TV会議システムを使った本社とのミーティングで結論を出し、翌週のアクションアイテムをも決めてしまうのだ。2人は「無事に開発続行を勝ち取った後、帰り際に空港で買ったビールとつまみで挙げるささやかな祝杯は、格別なんですよ(笑)」と目を細めた。

「RDK」で、売りにくいISPを売りやすく

そもそもISPを動かすには、そのISPと組み合わせたいイメージセンサーごとにファームウェアを開発しなければならない。だが、開発には費用と時間がかかるだけでなく顧客に詳細なヒアリングを重ねる必要があり、これが営業マンからすれば手間のかかりすぎる作業だった。

「そこでRDKを用意すれば、営業マンの手間も開発工数も大幅に削減することができるわけです。プロジェクトメンバー全員で企画を練り上げていく中で、海外販売子会社の皆さんにもようやく『RDKがあればISPや自社製品を売りやすくなる』と認めてもらえました」(桑山)
zoom
「RDK」はカメラだけでなく、Document Scanner(実物投影機)ほか、画像技術を必要とする製品を扱う世界中の企業がターゲットとなり得る。

「時には開発技術責任者である喜利をはじめとしたエンジニアに向け、TV会議システムで顧客との打ち合わせの実況中継をしたり、リアルタイムに開発部のエンジニアが実験して答えるなど、一発回答を心がけました。サポート面でもお客様の心をつかんだと思います」

今回のアジアにおける顧客ニーズヒアリング行脚は、「RDK」が真にISP開発の切り札となるソリューションであることを明白にし、さらなる顧客の拡がりを期待させるものとなった。その陰には、現地へと赴いた桑山・飯塚だけでなく、日本に控える多くのエンジニアたちの活躍があったのだ。

「出る杭」だらけ!でも、それが居心地良い職場

大手総合電機メーカーで半導体エンジニアとして12年間従事したのち、16年前にザインエレクトロニクスへと転職してきた桑山。

zoom「転職した当時、私は日本の半導体の将来に対して危機感を抱いていました。長時間の会議を重ねて検討を続け、タイムリーに結果を出さずにいたからです。また前職の大手メーカーでは、研究成果さえ出せれば売り上げに貢献しなくても気にしないエンジニアが大半でしたが、私は研究だけでは物足りなくて。転職しようか悩んでいたとき、当時の斜め上の上司に『研究開発だけやりたいなら俺のところに来い。ビジネスもやりたいなら、ザインへいけ』と背中を押してもらったんです。以来、居心地が良すぎて16年も働いています(笑)」
「うちは『出る杭は打たれる』ではなく、出ていないとむしろ大丈夫?と心配するような会社。良い意味で生意気な人に向いている職場環境かもしれないですね」(桑山)
 
「今回のプロジェクトは、半導体の企画というよりも、ビジネスモデルの企画と言った方がしっくりきます。うまくいったのは、メンバーに『いかにビジネスを増やすのか』という、自分のミッションとは関係ないことを考える『型破りさ』があったからだと思います」(飯塚)

また、“自分で旗を振りたい人”や“とんがった人”が多いのも特徴だという。

「実は私も入社した時、ベンチャーで学んで、いつか起業してやろうと意気込んでいました……3日で己の器を知り、今は出ていく気はありませんが(笑)。血気盛んな若手と一緒に成長するのも、なかなか刺激がありますよ」(桑山)

ベンチャー気質で、ビジネスに対する熱い心を持った社員が多い弊社。今後も彼らの志を受け継ぐ社員が、RDK のような画期的なソリューションを生み出していくに違いない。

(おわり)